1 節操ないな

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 彼女の話によると、よしのは飲み物を取ろうと、冷蔵庫に手をかけ、ちょっとかがんだ姿勢のまま動かなくなっていたそうだ。いくら呼んでも、揺すっても反応がなく、それはまるで──。 「人形になっちゃったみたいだった……」  ──人形。  魂の抜けた、イレモノ。  (そんな、まさか……)  直久の背筋を、ぞくりと冷たいものが走っていった。 「……いや、でも待って。さっきは普通に動いていたよね?」 「しばらくしたら元に戻ったの。私がお父さんを呼びに行っている間に。でも、その日から、度々お姉ちゃんはおかしくなって……動かなくなる時間も回数も、増えていっている気がするの。たぶん、悪霊のせいなんだと思う。お父さんもそう言っていたし、何人ものお医者さんの診察を受けたんだけど、みんな原因は分からないって言うの……」 「そっか。それでオレたちが──ゆずるたちが呼ばれたのか」  ただの幽霊退治ではなかったのだ。 (きっと、ゆずるとカズもオーナーから詳しい話を聞いているんだろうな。これはもしかすると、結構厄介なのかもしれないぞ)
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