7 俺にかまうな

27/46
前へ
/280ページ
次へ
  「この方が早い」  山神がそう言い終えるが早いか、天井から何かが落ちてきた。しかも、直久の真上に。当然、直久は落下物の衝撃で、バランスを崩し、ドサリと音を立てて床に倒れこむ。 「いててててて……」  軽く床にぶつけた後頭部を抑えながら、半身を起こそうとした時、目の前に誰かの足の裏が見えた。 「うわっ! え、ゆずるっ!?」  ぎょっとなった直久は、自分のすぐ横に折り重なるようにして倒れているゆずると和久に詰め寄る。 「大丈夫……突然、ものすごい力で上に引っ張られたからびっくりしたけど……」  半身を起こした和久が、そう言いながら山神の方を見た。 「山神さまが、こっちに僕らを呼んでくれたんだろう」 (そうか、それでさっき、『こっちのが早い』って言ってたんだな)  直久が二階のゆずるの部屋に駆けつけるより、二階の二人を三階のこの部屋に瞬間移動させたほうが『早い』という意味だったのだ。  (そうならそうと、ちゃんと説明しろって、だから! てか、だいたい何でオレの上に落っことすんだよ……オレはクッションかっつうのっ!!)  直久は山神を睨んだ。そんな直久の視線を、山神は軽くあしらうように笑う。あくまでも、直久をおちょくろうということらしい。うすら笑いを浮かべる彼の憎らしい顔が、ますます直久の敵意に油を注いでいく。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6347人が本棚に入れています
本棚に追加