6347人が本棚に入れています
本棚に追加
凍えそうなほど寒い。
なぜ、急に。
(……この感覚……あの時と一緒!!)
直久がごくりと唾を飲み込んだ時だった。何かを感じ取った和久が、勢いよく立ち上がったかと思うと、一瞬で廊下の方に向き直り、臨戦態勢をとる。慌てて立ち上がった直久も、和久の見据える方向へと視線を這わした。
開け放たれた部屋の扉の向こうには、まっすぐに続く廊下が奥の階段付近まではっきり見渡せた。
廊下の両壁飾られた、同じ大きさのはずの少女たちの肖像画が、だんだんと小さくなっていくように目に映る。まるで廊下の長さを不気味に強調させるように。
だが、それ以外のものは見えない。何の異常もない。
それでも、この凍てつくような寒さは間違いなく悪霊が近くにいる証。
(どこだ! どっからきやがるっ!!)
直久はじっと目を凝らした。口の中が乾いて、喉の奥がひりひりする。
「来る」
和久の声が、音の無い部屋に響いた。その瞬間、部屋の入り口の五メートル程先の床が黒く盛り上がったように見えた。
直久は思わず、目をしばたいた。見間違いかと思ったのだ。
だが、その盛り上がりは、ゆっくりと大きくなっていく。
最初のコメントを投稿しよう!