7 俺にかまうな

31/46
前へ
/280ページ
次へ
 直久は目を見開いた。  ズズズズズ……。  不気味な音をたて、何かが直久の体内に入り込んできた。あきらかに、異物が背中から体中の骨の髄にめり込んでいくような違和感だった。たとえようのない不快感と体が発火しそうなほどの熱さが直久の体を襲う。 「うわああああっ!」  背を反らしたまま硬直させ、声のかぎり絶叫する直久。 「直ちゃんっ!!」  血相を変えて、和久が駆け寄ろうとするも、強い力に弾き返され、床に吹き飛ばされてしまう。 「ぐああああああああーっ!!」  耳を覆いたくなるような悲痛な直久の叫びが、部屋の空気を引き裂いていく。   体の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような気持ち悪さに、強い吐き気を覚え、息をすることも出来ない。  頭から血の気が引く音が聞こえる。  心臓の音が大きく不規則になる。  体中から汗が吹き出る。 「直ちゃん!! 負けちゃだめだっ!! 直ちゃんっ!!」  遠ざかる意識の中で、そんな弟の声を聞いた気がした。だが、遅かった。  抵抗する間もなく、直久はついに、何とかつなぎ止めていた意識とその命の炎を、吹き消された……。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6347人が本棚に入れています
本棚に追加