7 俺にかまうな

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  「そんなはずない! この馬鹿がそんなことをするわけがないっ!!」 「……僕のせいなんだ……僕の結界では防げなくて……」  わなわなと唇を震わせ、ゆずるは直久を見下ろしている。 「だって……直久は……俺を嫌ってたはずだろう……なのに、なんでこんなっ!! 俺の代わりに死ぬなんて嘘だっ!! ありえない!!」  ゆずるの大きな瞳が揺れ動き、徐々に涙が溢れ出した。だが、泣くまいとするように、ぐっと唇をかみ締め、再び和久を睨みつけてくる。 「カズ、すぐに直久から悪霊を引き離せっ!!」 「……うん」  ゆずるに頷いて見せた和久だったが、霊を祓うだけの余力などなかった。それに、霊を払ったところで、直久が息を吹き返すことはない──決して生き返らない。それはゆずるにだってわかっているはずだった。  それでも、できないなどと、今のゆずるに言えなかった。  和久の頬を汗が伝う。小刻みに震える手で印を結ぼうとした時、それまで静観していた山神が口を挟んだ。 「やめておけ、今のそなたには無理だ。下手に霊を刺激すると、事態はよけいに悪化する。そやつが必死に守ろうとしたそなたまで、食われるぞ」  ぎりっと、矢のような視線を、ゆずるは彼に浴びせた。どうやら、そこで初めて彼の存在に気付いたようだった。
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