7 俺にかまうな

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 肩で荒々しく息をするゆずる。  山神は実に面白いものを見るかのように笑いながら、ゆっくりと首を横に振った。 「まあよい。我にはかかわりのないことじゃ」  それよりも、と山神は和久の腕の中の直久に目を移す。 「そなたが次代ならば、知っているだろう? そやつは体内にいったい何を飼っておるのだ?」 「……」  ゆずるは無言で山神を睨み続けた。 「答える気は無い、か。まあ、良い────良いのだが、そやつ、そのままにしておってよいのかのう?」  ニヤニヤと笑みをたたえながら含みのある言い方をする山神に、チッとゆずるが舌打ちした。 「もったいつけるな。何がいいたい」 「やれやれ。短気じゃのう」  わざとらしく山神は肩をすくめてみせた。 「そやつ、生きておるぞ」  部屋に一瞬の静寂が広がる。 「何っ!?」 「えっ!?」  和久とゆずるの反応はほぼ同時だった。 「何だ。死んだと思うておったのか? 確かに息はしておらぬし、心の臓も止まっておる。だが、まだ完全に死んだわけだはない」 「──!?」  和久は愕然として、腕の中で冷たくなっている兄を見た。  信じられるわけが無い。いくら神の言葉だとしても。  生きている?  こんな状態で!?  あんなに強い悪霊をまともに体内に入れて、なおも兄は生きていられるというのか!?  目覚めたての僅かな霊力しかもたない、あの兄が!? 「そやつが余計なことをしているがために、死に瀕しておるが」  
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