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◇◆
『直久は、ここで待ってなさい』
『なんでっ!? ぼくも一緒にいく』
『だめだ。ここから先は、直久には入れないよ。そこで母さんと一緒に待っているんだ、いいね』
『やだぁっ!! ぼくも一緒にいくっ!!』
小さい頃から、いつもそうだった。
必要とされるのはカズばっかりで、オレは何の力も持たない、“いらない子”。
なんで、神様はオレとカズを双子にしたのだろう。
同じ顔。
同じ声。
同じ服を着て、同じ髪型にすれば、普通のヒトには見分けがつかない。
でも、うちの一族のやつらは違った。どんなことをしても、すぐに見分けてしまう。
“和久”と“その片割れ”。
自分に向けられた侮蔑の顔。
ため息とともに吐き捨てられた落胆の言葉。
『ああ、なんだ、双子の兄の方か』
いつだって、そうだ。
オレはおまけ。
オレは必要ない。
生まれる必要などなかった。
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