7 俺にかまうな

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「私が聞きたいわ」 「うん。整頓しよう。そうしよう!」  直久は腕を組み、うんうん、と一人で納得するようにうなずいた。そして、彼女に再び座るように促す。まるで、自分の部屋であるかのように。 「えっとまず。オレは直久。君は?」 「…………え? だからアヤメ……ってそっからやり直し?」 「いいから、いいから。えっと、アヤメさんは、双子なんだね」  直久の強引なペースに戸惑いつつ、アヤメは諦めたように頷いた。 「そーよ。双子の姉が、ツバキ」 「ふむ。その双子のお姉さんのツバキさんが、生け贄になるはずだった方なんだな」  たいしたことを言ってないのに、まるで天才を演じている俳優気取りで、直久は顎をさすった。いわずと知れた、直久のここ一番のキメ顔というやつで。残念なことに、というか、相変わらずというか、案の定というか、当然効果はない。 「……生け贄のことは知っているの? 変ね。双子の私のことは知らないのに?」 「ああ。それは、絵を見たからね」  廊下に飾ってあった、肖像画にはツバキの名しかなかった。だから双子だなんて知るわけが無い。 「絵……ああ、清次郎さんが今、描いている絵のことね」 「……え?」  今度は直久がきょとんとする番だった。だが、アヤメはそれに気がつかずに話を進めている。
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