7 俺にかまうな

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  「なあ、いま何年? 何年何月何曜日? ついでに何日? ああああ~っ! もしかしたら、これってタイムスリップってやつ? タイムスリップかよ! おいおいおいおい! しちまったのかよ! マジでかぁっ!?」 「…………」  質問されているのかと思えば、自分で答えて納得している直久に、アヤメはぽかんとするしかなかった。 「どうすりゃあ、帰れるんだ? なんかの映画だと雷に当たると車がウィ~ンって動いて帰れるんだけどなぁ。いや、別のドラマで同じ衝撃を受けたら帰れたって話があったな。同じ衝撃、同じ……って言っても何が原因かまったくわかんね~~!! んがあああああっ!」  頭を両手で抱えこみ、体を反らして再び絶叫する直久。  わりと適応力があるのが、彼の救いだった。非科学的なものに対する順応性は九堂家の一員として生きるには、必須能力と言えるかもしれない。  ただ、黙って考えられないのが“残念な脳”と称される理由の一つかもしれない。脳内思考駄々漏れである。これは、うるさい、とゆずるに何度蹴られても直らない。 「待て待て。よく考えろ。こうなったのは、悪霊がゆずるを襲ったからで。その悪霊のせいに間違いない。するってーと、悪霊を探さないといけないつーことだよな。あーっ、でも、悪霊っていうのは、ツバキって娘のことで。彼女はこの時代ではまだ生きてるんだっけ? ひょええええええ~~!」  今度は、頬に手を当てて、『ムンクの叫び』と見紛うごとくの表情で、乾いた悲鳴を上げている直久。  一部始終を、ぱちくりぱちくりと瞬きの回数を増やしつつ、静観していたアヤメだったが、ほとほと困りきった顔で、むしろ、かわいそうなものを見るような眼差しを送り始めた。
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