7 俺にかまうな

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「ホントに、あなた何なの? さっきから、分けがわからないことを一人で……大丈夫なの?」  だが、アヤメの心配をよそに、直久は突然、きりりと表情を引き締めた。 「アヤメさん」 「は、はい」  改まって呼ばれ、アヤメはびっくりした顔になる。 「何かお困りではありませんか? この僕がっ、何でもっ! 力になりますっ!!」  がばりと、直久が両手を、アヤメの両肩に手を置く。目をキラキラと輝かせながら。  だが、対照的にアヤメは気の抜けきった顔になる。  つまり、直久の単純明快な思考回路はこうだ。  自分は悪霊のせいでこの時代のこの場所に来た。つまり、悪霊はこの時代に来て貰いたかったわけで、この時代の何かを解決すれば悪霊は満足するわけだ。だから、悪霊の──ツバキ、もしかしたら、ツバキと関係の深いアヤメ、または、その両方──とにかく、憂いを晴らしてやれば、もとの時代に帰れるはずだ。とすると、手っ取り早く、目の前にいるアヤメから片付けてしまおう。さあ、何が望みなんだ。言ってみろ。さあ、さあ、さあっ!!   だが、突然そんなことを言われても、誰だって戸惑う。むしろ、怖い。アヤメじゃなくても、後ずさりしてしまう。 「なんだ、どうした? なんでもいいぞ?」 「……な、ないわよ」
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