7 俺にかまうな

45/46
前へ
/280ページ
次へ
  「そんなはずない。だって俺、アヤメさんを救いに来たんだ。だから困っていることがあるはずだろ? 俺を助けるっと思って何でも言ってくれ」 「はぁ?」  アヤメはますます怪訝な顔をする。 「何それ。いったい、どっちがどっちを助けるのよ?」  そう言って、アヤメは彼女の肩に置かれた直久の手を振り払った。 「とにかく、私、全然困ってないから。助けるのなら、ツバキの方でしょ。ツバキ、明日の儀式で、生け贄にされちゃうのよ。きっとツバキの方が救われたがっているわ」 「儀式!? 生け贄!? 明日っ!?」  確かに、それは大変だ。大変だけど、何かが直久の中で引っかかる。  もし、生け贄になりたくなくて、助け出してほしくて自分を呼んだのなら、目の前にいるのはツバキであるはずだ。  しかし、彼女は自分ではっきりと名乗った──ツバキではない。自分はアヤメだと。 「でもね」  直久は素直に感じたことを口にした。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6347人が本棚に入れています
本棚に追加