9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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 そう考えるとなんだかむしょうに癪に障る。ガムでもつけて置けばよかった、と扉に向かって直久は舌を出す。ガムなんぞ、持っていないが。 (こうしちゃいられないっ!! ツバキちゃんだっ!!)  直久は、色々な邪念を振り払うように、首を勢いよく左右に振ると、アヤメの部屋の扉に向かっていた自分の体をぐるんと方向転換させる。そして、迷いの無い一歩を踏み出した。  直久の向かうべき場所は一つしかない。  ツバキという少女が、あの肖像画の少女であるなら。生け贄となる運命にあるのなら。今、彼女がこの広い屋敷のどこに居るのか、少し考えればすぐに分かる。だって、あそこ以上に怪しい場所なんて他にないのだから。  彼女がいるのは──物置部屋で見つけた扉の向こうだ!  直久は、アヤメの三階の一番奥の部屋から、長い廊下を大股で通過し、階段を一段抜かしで一階まで降りる。なぜか徐々に駆け足になってしまうので、もつれて転ばないようにするのがやっとだった。  そうして、あっという間に一階に片足を着地させたとき、直久は違和感を覚えた。 (?)  首をかしげ、辺りを見回す直久。一階の廊下は、エントランスまでまっすぐ見渡せた。  村上げての大イベントである、生け贄の儀式の準備で忙しいと、先ほどアヤメから聞かされていただけあって、確かに何人もの人が、バタバタと足音を立てて直久の前を往来していく。    だが、誰一人として明らかに不審者である直久を指差し、騒ぎ立てる者はいない。そればかりか、誰とも視線が合わないのだ。 (……なんだ?)  
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