9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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 それだけ、準備が切羽詰っていて、だから自分の存在に気がつかない、ということなのだろうか。それにしては──。 (オレ……見えてない?)  そう。まるで、直久などそこに存在しないかのように、人々は通り過ぎていくのだ。不思議とぶつかることなく、風を切るように。  そういえば、と直久は眉を詰めた。  階段でも何人もの人とすれ違ったが、やっぱり誰も直久に気がついていなかった。ぶつかりそうだと思って避けたのは直久の方だったから、全然気にしていなかったが。  これはもう確かめるしかない。そう意を決した直久は大きく息を吸い込んだ。そしてありったけの声で叫ぶ。 「すいませぇーーーんっ!」    これだけの声量なら、さすがに皆に聞こえるはずだ。だが──。 「……まじかよ」  誰一人として、茫然としている直久を振り返る者はいない。  やはり、自分のことが見えていない。  聞こえていない。  (でも……アヤメさんは見えてたし、しゃべってたよな……)  とすると、やはり自分を見ることのできるアヤメが、自分をここに呼び寄せたと考えるべきだろうか。  うーん、と腕を組み、唸りながら、直久は開かずの扉の前に仁王立ちしているしか、なすすべが無い。 (でもまあ、せっかくここまで来たしぃ? 扉の向こうがどうなってるのかも気になるしぃ? ツバキちゃんにオレが見えなかったら、アヤメさんで決まりってことになるしぃ?)  
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