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いったい誰に対しての言い訳なのか分からないが、とにかく直久はその扉を開けてみることにした。
とは言っても、もとの時代でもこの時代でも、扉には鍵が掛かっている。
床に膝を着いて扉を覗き込めば、取っ手の上にあるゴールドの、明らかにえらそうな鍵穴が、直久を小ばかにするように存在を主張している。鍵を手に入れられたのなら扉を開いてあげても宜しくてよ、おほほ、とでも言いたげに。
(……どうせなら、ドアとか壁とか通り抜けられたり、飛べたり、心が読めたり、もうちょっとサービスがあってもよかったんじゃないかと思う……中途半端にスケルトンにしやがって……いや、一回試してみるかっ。どうせ、この扉をどうにかしないと、ツバキちゃんには会えないわけだしぃ? ダメモト、ダメモト)
彼なりに筋の通った理論をもとに、次の行動へ移すことにした。直久の手がその扉の取っ手へと伸びていく。
ゆっくり、ゆっくり、でも確実に。その人差し指が、あと数センチで金色の取っ手に触れそうになった時だった。
────クスクス……。
と、扉の向こう、それもまるで息遣いが聞こえてきそうな距離から、少女の笑い声が聞こえた。嘲るような、そんな笑い声だ。
(誰……いるのか、扉のすぐそこに!?)
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