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直久たちが案内されたのは、ペンションの二階の客室だった。ふたり部屋だったので、ゆずるがひとりでひと部屋を使い、その右隣の部屋を双子が使うことになった。
部屋に入って荷物を置くと、直久はベッドの上に飛び込む。ほど良いスプリングが効いて、すこぶる寝心地が良い。セミダブルだろうか、両手両足をめいっぱい広げても、まだ余裕がある。
(極楽~極楽~。コレに温泉と、ウマイ飯とくりゃぁ言うことないね!)
まるで縁側の猫のように伸びていると、鞄を大きく開いて荷物の確認をしていた和久が直久に柔らかな視線を向けてくる。
「直ちゃん、気にならないの? 本当に?」
依頼の詳細についてだ。双子だからか、それとも共に育った十六年間の賜物か、和久の言いたいことはすべてを言葉にされなくても分かる。
ゆずるや和久の仕事を目の当たりにする機会なんて、タダビトである直久にとってそうそうあることではない。好奇心は湧かないのかと問われれば、まったく湧かないというわけでもなかった。
直久は眉間に皺を寄せる。
「聞いたって、手伝えることなんか無いし」
「でも、知りたいと思っているんでしょ? 八重ちゃんとずいぶん仲良くなってたもんね。どうせ、大丈夫だよとか言って安請け合いしたんじゃないの?」
「……」
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