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「そうそう。オレってばね、なぜか明治時代にきちゃったかわいそうな子なの」
「あなたの言っていることはよく分からないけど、ヘイセイっていう町があるのね。でも、どうしてここへ?」
「……町じゃなくて、ええっとなんて説明したらいいんだ。あ~なんか面倒だから町でもなんでもいいや。とにかくだ! 君がオレを呼んだんじゃないかと思って聞きにきたんだけど」
「え? わたくしが?」
「そう、君が」
「あなたを?」
「そう、オレを」
「…………なぜ? あなたのこと、わたくし、知らないわ」
「…………だよね。知らないよね~」
直久は、深いため息をついて、真っ暗闇でその高さがわからない天井を仰ぎ見る。その拍子に背後の壁に頭を軽く打ちつけ、ごつんと鈍い音が響いた。
(この美人姉妹じゃないのか、オレを呼んだのは……)
彼女たちの他の人物の可能性がある以上、直久にはお手上げな気分だった。
だいたい、自分は和久とは違って頭脳プレイは向かないのだ。駈けずり回って、相手を捕まえるとかなら、いくらでも対応可能なのだが。
(でもさ、オレのカンだと、二人のうちのどっちかだと思うんだけどねぇ)
それにしても……。
いったいこれから、自分はどうしたらいいのだろう。
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