9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「オレ……帰れないかも……」  完全に途方にくれている直久の肩に、そっと暖かいものが触れた。その温もりに、はっとして振り返る。ツバキの小さな手がそこに置かれていた。 「……家に帰れないの?」  心配そうに直久を覗き込む大きな瞳が、ランプの光でキラキラと煌いた。 「……ねえ、君はオレに何かしてほしいことない?」 「え?」  彼女の顔は、きょとんとなった。そこで直久は質問を変える。ゆっくりと、はっきりした声で。 「君は何がしたい?」  そういいながら、直久は腹をくくった。  もう、自分が見える人物の望みを全て叶えてやるしかない。他に方法があるのかもしれないが、自分には思いつかない。もう、これしかないのだ。 「何でもいいよ。片っ端から叶えていこう。一つ残らず」 「────したい事?」 「そう。君は何がしたい?」  直久はまっすぐにツバキを見つめた。ツバキもその真剣な眼差しを、しっかり受け止める。  壁にあるランプの一つが、ジジジ……という小さな音を最後に、揺らめきながら消えていった。  ツバキの視線がそのランプへと移り、ふわりと彼女は微笑んだ。コツコツと足音を立て、消えてしまったランプを手にとると、ツバキが口を開いた。
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