9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  ◆◇ 「アヤメさん……」  窓の外をぼおっと眺めていたアヤメは、突然背後から声をかけられ、びくりと体を震わせた。ソファーに座ったまま首だけを動かすと、情けない顔の少年がこちらに歩み寄ってくるのが見えた。 「……あなたはさっきの……」 「今、ツバキちゃんに会ってきたよ」  彼はアヤメに笑いかけた。どことなく、影のある笑顔だった。 「ツバキに……」 「うん」  アヤメはそっと彼から視線をはずす。なんとなく、彼の瞳がまっすぐ見られなかった。   (あの部屋へ行ったのね……)  窓の外に目をやりながら、アヤメは小さくため息をついた。  どうやってあの部屋の中へ入ったのかは分からない。でも、彼の表情から姉に会ったのは真実であろう。誰だって、あの部屋に閉じ込められた姉を見れば、今の彼のような顔をする。  誰もが自分を責めている気がした。  卑怯者と。  全てを知っているくせに、姉を見殺しにする自分を。 「それで……用がすんだんでしょう?」 「ううん。何をすべきなのかはわかったけど……オレ一人じゃ、どうしていいかわからないんだ」  
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