9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「お話があるのですが、今よろしいですか?」 「はい、どうぞ」  にこりと柔らかに微笑む彼に、アヤメは嬉しさを抑えきれない。彼は今、自分に微笑みかけている。ツバキではなく、自分に。  「今、お茶をご用意しますね」 「いえ、お構いなく。すぐに済みます」  扉から一歩部屋に踏み入れたものの、清次郎は部屋の奥には足を進めようとしなかった。 「そう言わずゆっくりなさってください。さあどうぞ」 「嫁入り前の娘さんの部屋に、こんな、しょうもない男が長居をして、変な噂がたったら困ります。ここで。それより──」  どうしても、用件だけを済ませて退散しようとする清次郎に、アヤメの胸がズキリと痛んだ。それでも、アヤメは微笑んだ。 (いいの。こうして会いにきてもらえるだけで。それだけで、胸が弾むのよ。あなたはそれを知らないでしょうけど) 「アヤメさんにお願いがあるんです」 「なんでしょう。私でお役に立てることだといいのですが」 「アヤメさんにしか出来ないことです」  真剣な清次郎の眼差しに、アヤメは嫌な予感がした。
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