9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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「行こう……? 一時になっちゃうよ」  開錠したものの、なかなか扉を開こうとしないアヤメを直久は促した。 「そうね。ぐずぐずしてはいられないわ」  意を決したように、アヤメは取っ手に指を絡め、そこから持ち上げるようにして扉を開いた。  扉の向こうに見えたのは、地下へと続く階段だけ。  床にぽっかりと空いた穴のような入口に足から体を滑り込ませ、扉の中に入ると、アヤメは階段を降り始めた。だが、階段は暗く、足元も見えない。  壁伝いに行こうと、手を伸ばせば、土壁の冷たさに、どきりとした。 「……」  それでも、震える足を、なんとか前に進める。  コツン……コツン……。  アヤメの足音だけがこだまして聞こえてきた。結構、深い地下室だ。 (……こんなところに……本当にツバキはいるの……?)  暗闇。  寒気。  孤独。  不安。  絶望。  アヤメが過ごしてきた地上の日常は、ここにくらべれば楽園かもしれない。
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