9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「大丈夫……?」  なかなか思うように進まない足を、引きずるようにしているアヤメを、直久が心配そうに覗き込んできた。 「大丈夫だったら!」 「…………」  きっと今、自分は真っ青な顔をしているに違いない。  怖い。  怖い、怖い、怖い! 怖い!!  ツバキに会うのが、怖いっ!!  アヤメは、涙腺が勝手にゆるみ、涙がこぼれそうになるのを必死に耐えた。  ガタガタと音を立て震えそうな歯を、必死にかみ締めた。    「あ……」  直久の声に、アヤメははっとなって、前方を見た。もう少し階段を下ったあたりだろうか。急に、前方がうっすらと明るくなった気がしたのだ。そして、その薄明かりの方から声がした。 「誰?」  アヤメは息を呑んだ。自分の声が聞こえたからだ。でも自分は声を発していない。  つまり、今の声は────。 (ツバキっ!)  ツバキの声を聞いた直久は急に元気を得たように、アヤメを抜いて足取り軽やかに階段を下りていった。そして、薄明かりの中に消えていく。
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