9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「やあ、ツバキちゃん。オレのこと覚えてる?」 「まあ、えっと、イケマンさんでしたからしら」 「おっしぃ~。イケマンてなんだよ。イケメン、イケメン!! ていうか、それ名前じゃないから。オレは直久!」 「あら、名前ではなかったのですか。申し訳ありません。直久さまですのね」 「“さま”はやめてよ~。なんかくすぐったいや。直ちゃんでいいよ、直ちゃんで」  一人真っ暗な階段に取り残されたアヤメは、放心したようにその二人の会話を聞いていた。 (……な、なんなの、この軽いかんじ……)  アヤメは急に、ひとり怖がって前に進めなかった自分が、馬鹿みたいに思えてきた。  ふう、と小さくため息をつくと、今度は軽やかに階段をくだり、アヤメも部屋の中に足を踏み入れた。 「ああ、アヤメちゃん、遅い遅い~! やっと来たよ」  直久の声に、ツバキがゆっくりとアヤメを振り返った。  アヤメの心臓が跳ね上がる。 「ツバキ……」  暗闇に目が慣れたせいか、部屋の中は意外と明るく感じた。ツバキが夜着をまとい、長い髪を下ろして、直久の前に立って、じっとアヤメを見つめている姿も、はっきり見える。
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