9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「いつも、アヤメは心配して声をかけてくれる。だから、好き。会いたいとずっと思っていたのよ」  満面の笑みを浮かべたまま、ツバキはがしっとアヤメの腕を掴んだ。そして、ぐいぐいと部屋の中へと引っ張りこむ。 「あっ」  慌てるアヤメにかまわず、ツバキはアヤメを部屋の中央にあるテーブルセットの椅子に座らせた。 「来てくれて嬉しいわ! お茶でも飲みましょう」 「ま、待って! 話があるのよ!」 「ええ、だからお茶を入れるわ。話をするときは、お茶を飲みながらだと清次郎さまに教えてもらったもの」 「清次郎さま……?」 「ええ。清次郎さまはいつも色々な話をしてくださるのよ。ほら、いつも来る、ばあやは口が利けないでしょう?」  ツバキは直久にも椅子に座るように促す。一時までには、さほど時間がないのを自覚している直久は困ったような視線をアヤメに向けてきた。だが、アヤメはその視線に気づいてやれるほどの状態ではなかった。 「清次郎さまは、いつも本当にいろんな話をしてくださるの。甘いお菓子も持ってきてくださるわ。それで、星の話や、花の話。ああ、今は冬だから寒いのでしょう? 冬には雪がふって。雪は冷たい。白い。アヤメは雪を見たことがある?」 「…………」  アヤメは言葉を返すことができなかった。
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