9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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 だから、何がなんでも、ツバキを外へ出さねば。  その後のことは、それから考えればいい!  アヤメの瞳に、一瞬、強い光が灯った。 (……清次郎さまと一緒に逃げるのは、ツバキ──あなたじゃないのよ!) 「わかったわ! 私が残る」 「え?」 「私がここに残るわ。あなたが戻ってくるまでの間、ここで待っているわ。もし、あなたが間に合わなくても、儀式は行われる。それなら安心でしょう?」 「……でも、儀式は私がずっと楽しみにしていたのよ?」  ツバキは心のそこからがっかりしたような顔をした。まるで、大好きなおもちゃを取り上げられた子供のように、しょんぼりと肩を落としている。 「それなら、戻ってくればいいわ、明日の儀式までに。でしょ?」 「……そうね。それならいいわ」  実に嬉しそうな顔をしているツバキを見て、アヤメは小さく息を吐いた。 (とにかく、なんとか外へでてくれそうね。あとは直久さんに任せよう)  直久との計画では、ツバキを山奥の小屋に住む、ばあやのところへ預けることになっている。ばあやにはもう話をつけてあった。  小さな頃から自分の孫のように育てきたばあやは、二つ返事でこの話にのってくれた。きっと、ばあやが大切に育ててくれるはずだ、今までもそうだったのだから。
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