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「さあ、こっちよ!」
ツバキに白い着物を着せ終わると、階段を上がり、部屋の扉の前へと急いだ。扉をあけると、直久が待っていた。
「私はあとから行くから、先にばあやのところへ!」
直久にだけ聞こえるように、言うとアヤメはツバキを部屋の扉の外へと押し出した。
「さあ、ツバキ。行くのよ」
「…………」
不思議そうな顔をして、ツバキはアヤメを振り返った。
「……楽しんで。あなたの人生を」
そう言ったアヤメは、自然に微笑んでいた。
なぜだろう。
穏やかな自分がいいる。
全てが、これで終わるのだ。
これで、自分たち姉妹は全てから開放される。
馬鹿げた生け贄からも。
この家からも。
ツバキは山奥でひっそりと隠れて暮らさなくてはならないけれど、ここにいて死を待つよりはずっといいだろう。
自分も、生け贄の“万が一のため”として生きてきた人生から、開放される時がきたのだ。もう、十分だと思う。十分すぎた。
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