9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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  「さあ、こっちよ!」  ツバキに白い着物を着せ終わると、階段を上がり、部屋の扉の前へと急いだ。扉をあけると、直久が待っていた。 「私はあとから行くから、先にばあやのところへ!」  直久にだけ聞こえるように、言うとアヤメはツバキを部屋の扉の外へと押し出した。 「さあ、ツバキ。行くのよ」 「…………」  不思議そうな顔をして、ツバキはアヤメを振り返った。 「……楽しんで。あなたの人生を」  そう言ったアヤメは、自然に微笑んでいた。  なぜだろう。  穏やかな自分がいいる。  全てが、これで終わるのだ。  これで、自分たち姉妹は全てから開放される。  馬鹿げた生け贄からも。  この家からも。  ツバキは山奥でひっそりと隠れて暮らさなくてはならないけれど、ここにいて死を待つよりはずっといいだろう。  自分も、生け贄の“万が一のため”として生きてきた人生から、開放される時がきたのだ。もう、十分だと思う。十分すぎた。
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