9 どっからどうみても、オレはイケメン高校生でしょう?

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 これからは、姉妹ともに、新しい人生を歩んで行こう。  そしてまたどこかで会えたら、その時は、一緒に笑い合おう。 「行こうっ、ツバキちゃん!」  直久に腕を引っ張られるようにして、ツバキが廊下を走り抜けていく。  白い着物を着たもう一人の自分の姿を、アヤメはじっと見つめていた。ツバキもずっと視線をはずさない。 (さようなら、ツバキ。幸せに。どうか幸せに……)  ついに、玄関からその二人の姿が消えたのを見届けると、アヤメも行動にうつった。 「清次郎さま……」  急いでアヤメは裏庭の方へ走り出す。  清次郎との待ち合わせ場所は、裏庭を抜け、裏門を出たところだった。  赤い着物の裾がはだけても、気にせずに全力で走った。  彼が待っている。  彼は自分を待っているのだ。  そう、私は今、この時から──ツバキなのだ! 「ツバキ!?」  裏庭を抜けたところで、アヤメは誰かに手を掴まれた。ぎくりとなってアヤメは身を縮ませる。だが、その人の顔を見て、これ以上の無い幸せをかみ締めるような笑顔になった。 「清次郎さま!」  アヤメは迷わず、清次郎の胸に飛び込んだ。清次郎もそれをしっかりと受け止める。 (ああ……暖かい)  
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