10 寒椿

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 雪がひどく降ってはいても、今さっき、付けられた二人の足跡を隠すには、足りない。しかも、追われているとは気がついておらず、女連れ。追いつくのは時間の問題だ。 「行くぞ」  父は、背後にいる村人たちに声をかけ、積雪の中に足を踏み出した。  だが、このとき、誰も考えもしなかったのだ。いくら発見した娘が白い着物を着ていたとしても。  まさか、外にでているのがツバキの方で、あの地下室に閉じ込められている方こそが、アヤメであるとは────。   
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