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直久はぞくりとした。ツバキの背後に再び黒い靄が立ち昇り始め、不気味にうごめきながら、それはみるみるうちに成長し始めていたのだ。
ツバキの表情が、すっと無表情に戻った。
「言ったでしょう、邪魔しないでって!」
直久がごくりと唾を呑んだのと同時に、ツバキの目が赤く、妖しく閃光を放つ。
その瞬間、ツバキの背後から黒い靄が、一斉に直久にむかって伸びてきた。
あっという間に直久は靄に捕らえられ、一気に飲みこまれた。
「うわあああああ」
叫びながら、直久は目をぎゅっと閉じた。反射的に、次に来るだろう衝撃や痛みから身を守るために、体が反応する。
────あら、ツバキが動かないわ
体にどこも痛みを感じないまま、代りに直久の耳に飛び込んできたのは、幼女の声。
完全に意表をつかれた直久は、目をつぶったまま「……はい?」と首をひねった。
いくら待っても、何も事がおきなそうなので、おそおそる瞼を上げてみる。閉じている時とさほどかわらない闇が見えた。
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