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あたりを見回すまでもなく、幼女が椅子に座っているのが直久の目に飛び込んできた。まるで闇の中に、そこだけスポットライトでも照らされているかのように、浮き出して見える。
それにしても、ここはどこだろう。首を左右にひねって確認するが、どこまでも闇が続くばかりだ。
────寝ているのかしら?
五、六歳だろうか。その横顔が、すぐに直久の記憶の中の人物に思い当たり、また白い着物を着ているために、幼女はすぐに特定できた。ツバキだ。
よく見れば、ツバキは膝の上に置かれた鉢を、食い入るように見ている。
(金魚鉢?)
鉢には水がはられ、紅白の金魚の姿があった。しかし、白い方は水面に仰向けになって浮いている。
記憶だろうか。ツバキの幼い頃の。
直久は、まるで再現映像を見ているかのような感覚にとらわれていく。
ふと、自分に何か伝えたいことがあるのではないか、という考えが直久の中に沸いてきた。
なぜかわからないが、直久にはツバキから殺意を感じない。さっき対峙してから、ずっと。
だから、きっと何か直久に分かって欲しいことがあるのではないか、そう思えてしょうがないのだ。
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