10 寒椿

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 直久は、ボロボロの赤布を纏った一体の人骨を見つめながら、体を折って泣き崩れた。  苦しかったに違いない。  寂しかったに違いない。  それでも、ずっと待っていたんだ。直久が助けにくるのを、ずっと。  力尽きても、こんな姿になっても……。自分を待っていたんだ。 「こんなに待たせて、ごめん。……ごめん、アヤメさん」
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