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「本当に、ありがとうございました」
何度も繰り返し頭を下げるオーナーに、優しく首を振る和久。
「もう大丈夫だと思いますが、また何かありましたら、いつでもおっしゃってください」
ペンションを覆っていた影もすっかりと晴れ、よしのの意識も取り戻されて、万事解決したわけだが、直久一人、なんだかすっきりとしない。
旅行鞄を片手で担ぎながら、直久は眉間にしわを寄せ、和久に振り向く。
「カズ、ちょっと聞きたいんだけどさぁー」
「何?」
直久は、自分だけに起きた体験をゆずると和久に話し聞かせていた。すると二人は何やら納得して、オーナーに仕事を終えたことを伝えたのだ。だが、直久はちっとも納得できない。
「確認するけど、ゆずるを襲った少女の霊はツバキちゃんだったんだよなぁ? その理由はアヤメさんをあの部屋から助けだすこと」
「それと、鍵を手渡すためにね」
「じゃあ、よしのさんやオーナーの妹とか、長女に生まれた娘が十六歳になったら魂が抜かれたようになっちゃうのって、それとどう関係してたわけ?」
「それは……」
和久は口元に手を持っていき、親指で下唇をなぜる。
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