エピローグ

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  「ツバキさんもアヤメさんも、誰かを犠牲にして、あの部屋に引き入れなければ出られないと思い込んでいた節があるんだ。特にツバキさんは、アヤメさんを自分の身代わりにして清次郎さんと逃げようとしていたわけで、身代わりがいなければいけないという生前の思いが強い。強く思っていたことって、死んだ後も残ることがあってね。しかも、不完全な記憶として残ることが多くて、ツバキさんの場合、怨霊となってしまったから、アヤメさんをあの部屋から連れ出すためには、他の誰か……身代わりとなる少女を部屋に閉じ込めなければならないと、強く思い込んじゃったみたいなんだ」 「要するに、ツバキはアヤメさんをあの部屋から自由にしてやりたくて、身代わりによしのさんたちの魂を部屋に引き込んだってわけだな」 「そう。だから、直ちゃんが扉を開けたとたん、いくつもの魂が部屋から解放されて、飛び出て行ったのが見えたよ。よしのさんも同じ頃、意識を取り戻したしね」  直久は、ふーんと頷く。  なんにせよ、ツバキも『怨霊の後悔無限ループ』から抜け出せたようだし、アヤメもしっかり埋葬してもらえるようだから、すべて解決なのかな、と直久は一人ごちる。  オーナーと話を済ませたゆずるが、怠そうに、鞄を担ぎながら双子の方に歩み寄って来た。  無造作に突っ込まれた茶封筒がコートのポケットから覗いている。 「行くぞ」  擦れ違いざまに短く言って、ゆずるは先に玄関をくぐった。それを追って直久と和久も外に出る。  
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