エピローグ

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 直久が銀世界の眩しさに目を細めた時、八重が三人を呼び止めた。  振り返ると、八重の後ろに日本人形のように綺麗な少女が静かに立っているのが見えた。  ドキッとして、直久はその少女を見つめる。すると、しっかりとした瞳で見つめ返される。 「お姉ちゃんが直久さんにお礼が言いたいんだって」 「お礼? 俺に?」  直久はきょとんとなって、人差し指で自分を指す。それを受け、よしのがコクリと頷き、すーっと目の前に何かを差し出した。あの部屋の鍵だ。 「これを。どうか、直久さんがお持ちください」 「だけど」 「忘れないで欲しいのです」  直久がまごまごしているうちに、よしのは無理矢理、直久の手に押しつけた。そして、ふふふ、と微笑んだ。眩しいほどに綺麗で、可愛らしい笑顔で。 「あれ? お姉ちゃんって、直久さんと和久さんが見分けられるの? ちゃんと二人を見分けられるのって、ゆずるさんくらいかと思ったわ」  八重の言葉で、そう言えば、と直久は思った。  迷うことなく今、まっすぐ自分のとこ来た。 普通、初対面の人は自分と弟を、区別することなどできない。直久の両親ですら、日常的に直久と和久を見間違えるのだから。  腑に落ちない顔で、直久が首をかげていると、くすくすと笑い声が聞こえてきた。よしのだ。
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