エピローグ

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  「やあね、八重ったら。全然違うじゃない。見分けるも何も、直久さんと和久さんは別の人ですもの。ねっ、ゆずるさん」  急に話を振られたゆずるは、よしのを一瞥しただけで、無言で眉を顰めた。  それから、二人は何だかんだ言ってバス停まで見送ってくれた。  三時間に一本、しかも午後2時が最終便だという、田舎のバスの中のバスがちんたら走ってくる。さすが山道。当然のように乗客もおらず、貸切状態である。  それを横目にしながら別れを言い交わした。  バスが止まり、ゆずるが乗り込み、続いて和久が乗ろうとした時、直久はふと思い出した。 「そう言えば、山神は? 八重ちゃん、体、大丈夫? どっか変なことにはなってない?」  その言葉に驚いて、和久が振り向く。 「直ちゃん!」  はっ、として直久は八重を振り返った。しかし、八重はぽかんとした顔をしていた。 「何のことですか?」  どうやら山神は、憑りついていた八重の体から綺麗さっぱり出て行ったようだ。よしのの意識が戻り、八重の望みが叶えられた今、山神がペンションにいる理由がないからだ。  きっと高笑いでもしながら、どこへなりと行ってしまったのだろう。最後まで、よくわからないやつだ、と直久は心の中で舌打ちした。  直久が面白くないという顔をしていると、バスの窓を大きく開けて、和久が顔を出した。
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