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直久はよしのを目で追う。
よしのはふわりと笑顔になった。
「────え?」
そう直久の口が動いたのが、よしのには分かったようだ。
小さくなるバスの姿を見つめるよしのの顔は、まるで青空のように晴れ渡っていた。
「いきましょ、八重。話したいことがいっぱいあるわ」
姉妹が去ったバス通りの両脇には、純白の雪が静かに横たわり、道沿いに植えられた椿は、今にもはじけそうなほど蕾を大きく膨らませている。そう遠くない未来、見事な深紅の花を咲かせるために──。
【完】
シリーズは『春眠』へと続きます
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