3 よそ様の家を破壊するな

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「確かに……普通に物置部屋っぽいね」 「はい……電気をつけますね」  八重が部屋の中ほどまで入って、天井から太いコードでぶら下がった裸電球を点けた。カッチという音が物悲しく響くと同時に部屋が暖色光に染まる。ゆらりゆらりと揺れ動く電球に合わせて、八重が作る影も揺れていた。  部屋の奥に小さな四角い窓がひとつだけある。侵入者を防ぐためか、窓枠には鉄格子がはめ込まれていた。その窓の前にも床置きされた木箱がいくつか積み重ねられており、木箱に寄り添うように、今はもう使ってはいないだろうと思われる旧式の掃除機や洗濯機、ダイアル式チャンネルのテレビなどが置かれている。  直久も部屋の中に足を踏み入れ、きょろきょろと見回しながら感嘆の声を上げた。 「普通に物置っていうか……なんだここ、普通じゃない! 昭和博物館って感じじゃん。ほら見ろよ、カズ。あれなんか黒電話じゃね? あっ、あそこには炭火アイロン。初めて見た!!」  数十年ほどタイムスリップしたような、直久にとって物珍しい生活機器を見つけ、嬉々として弟を振り返った直久だったが、弟の曇った表情を見て、すぐに笑顔を引っ込める。  和久とゆずるは未だ部屋の入口に突っ立ったまま、中に入って来る様子はなかった。 「入れないかんじ?」 「……直ちゃんたちはよく平気だよね……」 「ただの物置部屋だって。面白そうなもんはいっぱいあるけど、怪しげな雰囲気の物なんてないし、別に寒くもないし、異常な――」  そう口にしたその時だった。
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