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――――ガガッ……ガガガガガガガッ……
恐怖のあまり、つい後ずさりした。その時、直久の手が部屋の壁に当たってしまう。
その、自分の立てた壁の木板を引っ掻いた音に、全身の皮膚の毛がいっせいに逆立った。
足元から駆けあがってくる悪寒に叫び出しそうになるのを必死にこらえる。
なんてことだ。
さっきから聞こえている、不可思議な音の正体がわかってしまった。
出来れば分かりたくなかった。
こんなこと、一生、分かりたくなかった!!
――――ガガガガッ……
「うわあああっ!!」
直久はついに、悲鳴を上げて尻もちをついた。
「直ちゃん!?」
和久の心配そうな声が飛んできたが、振り向く余裕もない。
「居る!!」
「え?」
「誰か、いる!!」
「感じるの?」
「誰かが、壁を引っ掻いてるんだよっ!!」
――――ガガッ!!
音から逃れたくて、直久は両手で自分の耳を塞いだ。だが、聞えなくなるどころか、しだいに大きく、大きくなっていく。
――――ガガッ!! ガガッ!! ガガガッ!!
やがて引っ掻く音は、拳を叩きつける音に変わり、ドンドンと、まるで太鼓を打ちつけているようだ。
しかも、その音は直久の足の下から、直久を突き上げるように響いてくる。
「うわあああああああああああっ!」
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