3 よそ様の家を破壊するな

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 直久は弟の手を借りて立ち上がると、再び部屋へと向き直る。最初の一歩こそ躊躇ったものの、まるで何かに突き動かされるように、大股で奥へ進んだ。そして、窓の下に積み重ねられた木箱をひとつずつ別の場所に移動させていく。  まったく迷いのない直久の行動に、何を始めたのかと他の三人は唖然としてその様子を眺めていた。そして、直久がやっとの思いで最後の木箱をどかすと、なんの変哲もない床板が現れて、三人は――木箱の下から何か出て来るのかと予想していただけに――首をかしげてしまう。本当に直久は何がしたいのか、と。  だが、直久だけは違った。よし、と小さく気合を入れ直すと八重に向き直った。 「八重ちゃん、バールってないかな? でっかい釘抜きみたいな」 「鉄挺(かなてこ)ならそこに。……何をなさるんですか?」  八重に指示された木箱を見れば、大工道具が一式そろえられてしまわれている。そこから目当ての工具を取り出すと、直久は床板の隙間に鉄挺の先端を差し込んだ。  バキッ。  バリバリバリッ。  無残な音を響かせて床板が剥がれる。 「直ちゃん!?」 「おい、何をするんだ! よそ様の家を破壊するな。馬鹿かっ!!」  純粋に驚きの声を上げたのは和久で、罵声はゆずる。だが、二人はすぐに直久が剥がした床板の隙間から覗いているものを見て言葉を失い、ひゅっと喉を鳴らした。  二人が押し黙ったのを確認して、一応八重を見る。八重は静かに頷いた。だから、直久はそれを黙認と取った。  バキバキッ。  バキッバキッ!!  床板をさらに剥がしていくと、ついにその場にいた全員が言葉を無くした。 「……ここだ、さっき引っ掻いてたのは」  床板の下から現れたのは、古く黒ずんでいるがとても頑丈な作りの――木製の扉だった。
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