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床板の下から見つかった扉は、人がひとり入れるくらいの大きさで、形は、ほぼ正方形だ。一見すると、地下収納庫のようだが、拳で叩いてみると、遠くまで音が響いて聞こえる。その先に広い空間があることが想像できた。おそらく地下室だろう。
ところが、地下室の存在を確認しようと扉の取っ手を掴んで開こうとするが、びくとも動かない。見れば、取っ手のすぐ上に鍵穴らしきものがあった。なるほど、力任せに引っ張っても開かないわけだ。鍵が必要な扉だったのだ。
「八重ちゃん、鍵に心当たりある?」
扉を発見した時の八重の反応を見ていた和久が、八重の返事をあらかじめ予測しながら、念のために尋ねる。
八重は頭を左右に振って答えた。
「すみません。分かりません。そんなところに扉があったことさえ知りませんでした。たぶん、お父さんもお姉ちゃんも知らないと思います」
「だよね。でも、念のためオーナーに聞いておいてくれる?」
「はい」
「じゃあ、今日はもう遅いし、続きは明日だね」
「ええっ!?」
驚いたのは直久だ。だって、目の前には如何にも怪しい扉がある。なぜ、すぐに開けない? 鍵がなくて開かないからか? いやいや、だって今、直久の手には鉄挺がある。こじ開ければいいではないか。それなのにこんなところで、はぁ~い、続きはまた明日ねっ、なんて言われたら気になって眠れないではないか。
和久が八重を自室に戻るように促している、その様子を横目で見ながら直久は腕を胸の前で組む。
(さては、何かワケがあるんだな)
直久が一人考えこんでいると、案の定、八重の姿が見えなくなったところで、和久がゆずるに話を切り出した。
「気がついた?」
「外のか」
「うん。やられたよ。気がつかなかった。ペンションの中にいると、ここの悪霊の気配が強すぎて……。うまく隠れてる」
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