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確かに応接間だけを見ても調度品はアンティークばかりだ。今まさに直久たちが座っている長椅子だって肌触りのいい赤い生地に金糸で丁寧に刺繍が施されている。縁取りや肘置きも当然、純金。きんきらきんで眼がチカチカする。見るからに高そうだ。
壁には鹿の頭が飾ってあるし、天井には巨大なシャンデリアがキラキラ揺れている。まさにドラマとかマンガで出てくるような金持ちの応接間だ。
「――とは言え、祖先から受け継いできた曰く付きの土地です。売って手放すことも、借家にして別の土地に移り住むことも許されず、このように元々あった古い屋敷を改築してペンションを始めることにしたのですが」
「幽霊がでるので営業できない、と」
ゆずるの身も蓋もない問いに、山吹がばつの悪そうな顔で頷いた。
すぐに和久の笑顔が、山吹に温かな日差しを注ぎ込む。
「ご依頼の件、承りました。僕たちにお任せください」
依頼主――山吹が初めて笑顔を見せた。さすが仏の和久だ。相手に安心感を与える術において和久の右に出る者はいない。
和久はその温かな微笑みを浮かべたまま話を進める。
「では、細かな質問をいくつかよろしいでしょうか。悪霊退治に欠かせないことなので」
「は、はい」
「まず……」
仕事モードに入った双子の片割れを一歩引いた姿勢で眺めながら直久は、ふと、応接間の窓に視線を流した。窓は外の冷気を防ぐために二重になっている。
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