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口に出してはいないものの、色々と思案させられた直久は、苛立ちを隠すことなく、舌打ちした。そして、自分も自分たちの部屋の中に入ると、ゆずるに聞こえるようにわざと大きな音をたててドアを閉めた。
大股でベッドへ行くと、むすっとした顔で、直久は自分の体を投げ出した。スプリングのきいたベッドは、よく弾む。
「直ちゃん……」
諭すような和久の声が追いかけてきたので、体をひねって背を向けた。その明らかな拒絶の姿勢も、ものともせずに、和久は続ける。
「ゆずるは今、すごく不安なんだと思う。だって、霊の存在は感じるし、見えるんだ。けれど、普段なら簡単に追い払える霊ですら、今は太刀打ちできない。その上、悪霊たちは次から次へと、ゆずるの魂を求めて集まってくる。なのに──何もできないんだ。すごく怖いと思う。そんなの僕だったら耐えられないよ。だって、ひたすらに、結界を張って身を潜めてやり過ごすしかないんだよ?」
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