4 だめだ、消える

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  ◇◆  その後、双子はさして会話もせずに、寝仕度を済ますと、早々に布団に入った。  すると、あっという間に直久の隣のベッドから規則正しい寝息が聞こえてきた。  よく考えたら、和久はこの広い屋敷の浮遊霊を除霊したのだ。顔に出さないから気がつかなかったが、相当疲れていたのだろう。 (おつかれさん……)  直久は、弟を起こさないように気を使いながら、体を起こし、ベッドに座った。そして、ぐっすりと眠る弟の布団を、かけなおしてやる。  普段と変わらないように見えるが、きっとゆずるが不安を抱えているのと同じように、今の和久は多くの責任という重圧を感じているに違いない。  依頼人家族を悪霊から守るだけでも、今回は厄介そうだというのに、霊力を持たない直久がいる。それに、ゴキブリホイホイならぬ“悪霊ホイホイ”と化したゆずるまでもが、和久の肩に重くのしかかっているはずだ。  なにしろ、ゆずるは“あの”九堂本家の次期当主。大きな傷を負わせようものなら、長老たちがこれ幸いと、どんな無理難題を言いつけてくるかわからない。
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