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だが、それよりもはるかに強い喉の痛みを感じた。ヒリヒリと喉が焼け付くようで、あっという間に口の中の粘液が蒸発していくようにすら思える。
何よりも、体が勝手に防衛本能のスイッチを入れたかのように、心臓が強く早く脈打ち、呼吸が荒くなっていく。
それだけではない。直久の肌もその部屋の異変を感じ取っていた。
(……寒い……)
明らかに、廊下や直久たちの部屋よりも、温度が低く感じる。
何なんだ、この部屋は。いったいどうなっているというのだ。
直久が未だかつて感じたことのない大きな不安に襲われた時だった。
「……くっ」
どこかからかすかに誰かのうめき声が聞こえてきた。それで、直久は、はっとなる。
(そうだ、ゆずるっ)
すぐさま首を右左にひねり、暗闇の中、必死に目をこらした。
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