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「……消える」
そう、ゆずるが言った直後。
── プツ ──
わけがわからずに、呆然としている直久の耳にそれは確かに聞こえた。まるで細い糸が切れたような、やっと聞き取れるような音だった。
なんの音だろう、と思ったのもつかの間、一瞬にして、直久の周りの空気が、ずどんと、肩にのしかかるように重くなる。そして、急激な吐き気を催した。目がぐるぐると回るような感覚もあれば、胃をわしづかみにされ振り回されたような気持ち悪さだ。
「うっ……うえっ……」
胃液が出そうになるのを必死にこらえた。
直久は悟った。先ほどの、ブツっという音は、ゆずるのために和久がこの部屋に張ったという結界が壊れた音だったのだ、と。
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