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(……ゆずるもカズも、いつもこんなの感じてるのかよ……)
なんとか持ちこたえた直久は、ちらりとゆずるに視線を送って、ぎょっとした。
「ゆ、ゆずる!?」
ゆずるが、今にも意識を失いそうなほどぐったりとしているではないか。
初めて悪霊の霊気を感じる直久とちがい、ベテランのゆずるなら、こんなの大したことない、と言わんばかりの涼しい顔をしていると思ったのに。
「お、おいっ!!」
ゆずるの頬をピシャピシャと叩いた。僅かに目を開けたが、すぐに閉じてしまう。
「しっかりしろ!!」
叫びながら、ゆずるを抱き起こした。そして、ゆさゆさと乱暴にゆずるの体を揺する。が、今度は力なく項垂れ、動かない。
(これって、万事休す?)
ごくり。生唾を飲み込む音だけが、闇に包まれた無音の部屋に響き渡った。
明らかに剣呑な空気の中、何の抵抗もできない二人で、どうしろというのだ。危険が察知できても、その危険を回避できねば何の意味もない!!
直久は激しく後悔した。もっと和久の話を真剣に聞いておくべきだった。こんな時に直久にもできることを、何か教えてもらえばよかった。少なくとも──。
(和久をたたき起こす方法聞いときゃよかった。てか、ゆずるなら知ってるかもしれない!)
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