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直久が悔しさと歯がゆさでいっぱいになった時、突如としてゆずるの体が腕から、ずるりとすり抜けた。まるで、何者かが闇の中へゆずるを引き吊りこもうとしているかのように。
(なっ!? ちょっ……!)
直久はとっさにゆずるの左腕を掴み、間一髪で腕の中へ引き戻す。
「あ……あっぶねーっ!!」
肝を冷やしながら、ゆずるをしっかりだき抱えた。しかし、なおもゆずるは、かなり強い力でひっぱられている。
その力はだんだんと強さを増していった。しだいに、意識の無いゆずるの体が、直久から引き離されていき、直久はそれを何とかつなぎ止めるのに必死に腕を引っ張るしかない。
(腕が……このままじゃ……キツッ)
持たない。限界の見えてきた自分と、限界どころか、まだ力を強め続ける姿なき敵。勝敗は火を見るより明らかだ。
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