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完全に、初めて霊的存在を目の当たりにし、その恐ろしい姿に、頭が真っ白になっていた。だが、再びゆずるの身体がその手に強引に引っぱられて、すぐさま我に返る。
「うわあぁ……あっぶねぇ……」
自分までもが引きずり込まれそうになり、片手で、とっさにベッドの枠を掴んだ。
限界が近い。しかも片手で抵抗できるほど、敵の力は甘くない。
その上、腕には乳酸がたまり、ぱんぱんになっている。手のひらも汗がにじみ、いつ、ゆずるの腕が滑り落ちてしまうのではないかと気が気ではない。
「だぁーーっ!! ゆずる、しっかりしろっ!!」
ゆずるが正気に戻れば、自力で腕を掴んでくれれば、ベッドにくくりつけるとか、その間に和久を起こすとか、色々やりようがあるかもしれないのに。このままでは、この手が離れるのを待つだけになってしまう!
ズルリ……。
徐々に引っ張られ、直久の手から引き離されていくゆずる。直久の表情に焦りの色ががこくなる。
もう限界だった。
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