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それでも、直久は諦めなかった。
(ぜってー、離すもんかっ!! 俺は腕がちぎれても離さねーぞっ!!)
確かに、ゆずるとは折が合わない。顔を見れば、いつもむかついてくる。
でもそれは、嫌いだからではない。
この十六年間、家族の次に、共に過ごした時間の長いいとこを、いつもどこか妬ましく思っていた。一族で一番の能力を持ち、誰からも認められる、同じ年のいとこの存在を。
ゆずるといるとどうしても比べてしまう。
何も力を持たない、一族から無視される自分と、すべてを持ち将来を期待されるいとこ。
存在そのものを消された気分になる。
自分はここにいる。確かにいるのに。
なぜ双子の和久だけが、厚く庇護され、自分は臭いものでも見るかのような扱いを受けねばならないのか。
でも、ゆずるが悪いわけではない。好きで、その力を持って生まれたわけではないのだ。
好きでこんな怖い思いをする奴がどこにいる。何度も、何度も、こんな死にそうな思いをしながらも、できて当然のような親族の目をいつも感じていたに違いないのだ。その親族の中に自分もいた。
だからゆずるは自分を冷ややかに見下していたのかもしれない。
何も知らないくせに、と。
己の運命をゆずるのせいにして逃げていた自分が、同じ年月かけて運命と必死に戦ってきたゆずるに叶うわけがない。
オレはオレだ、と言いながら、直久自身が自分を認めていなかったのだから。
いつか、素直にゆずると対峙できる日がくるだろうか。ゆずるの気持ちを汲んでやれる日がくるだろうか。
弟と肩を並べ、ゆずるの力になってやれる日が──。
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