4 だめだ、消える

23/23
前へ
/280ページ
次へ
(くそーーっ!! 死なせてたまるかっ、こんちきしょおおおおっ!!)  最後の力を使い果たすとばかりに、その名を叫んだ。 「和久あああああっ!!」  その時、一瞬だけ、部屋の空気が揺れる。  すると、わずかな間をおいて、けたたましい足音とともに、誰かが駆け込んできた。すぐさま、弟の刺すような鋭い声が部屋に響き渡る。 「臨、兵、闘、者、皆、陳、烈、在、前っ!! 悪霊退散っ!!」   朦朧とする意識の中、ふっ、と部屋中の重苦しさが消し飛んだのを感じた。 (助……かっ……た……)  意識を完全に手放す瞬間、直久は自分に駆け寄った弟の声の他に――クスクス、と誰かが笑う声を聞いたような気がした……。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6348人が本棚に入れています
本棚に追加