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「抱きあって寝てるところ悪いけど、いい加減起きたら~?」
直久とゆずるは、そんな和久の一言から、今日という最悪の日を迎えた。
「直ちゃんを隣の部屋に担いで戻ろうかと思ったんだけど、直ちゃんってば、ゆずるを抱きかかえたまま全然離さないんだもん。そのまま放置して僕は隣でゆっくり寝たよ。けど、まさか朝までそのまま寝てるとは思わなかった」
弟の朗らかな笑い声と、きらきらとした日光が降り注ぐ中、徐々に定まる直久の視界。
(……朝……?)
目の前に見えるのは、直久と同じく、重たい瞼をなんとかこじ開けようと必死なゆずるの顔だった。しかも至近距離。
「…………」
首を動かし、周囲を見回し、状況を把握するのに二十秒。
直久は自分の腕がゆずるをしっかりと抱きかかえた状態になっていることに気づき、おわっと叫びながら自分の体を引いた。と、ほぼ同時に、同じく状況を把握したゆずるが勢いよく直久を突き飛ばした。
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